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issue: 192
title: 次の10年 雇用の未来を描く(構造要約)
date: 2025-10
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創刊30周年特集第2弾。Section 1(5予測)→ Section 2(12提言+3ケース+Column)→ まとめの3層。5人の有識者(古屋星斗・井上智洋・山田久・矢田稚子・朱喜哲)と提言の論客群で構成される総合ビジョン号。
はじめに(編集長序文, pp.4-5)
- 30周年Vol.1(w_191)は過去30年の回顧、本号(Vol.2)は次の10年予測
- 人口動態変化、国際紛争、右傾化、気候変動、AI急速進化の5重ショック
- 予測は楽観的でない — 労働力不足、格差分断、職場意味変容、リスキリング切実
- 12の提言は「企業人事のみならず、社会、教育、地域、政策」まで及ぶ
Section 1 社会、組織、働く人々の次の10年(5予測)(pp.6-16)
予測1 労働力不足: 古屋星斗(リクルートワークス研)× 山田久(法政大)
「奇妙な人手不足」の3要因:
1. 雇用人員判断DI(2025年6月) = -35(全産業)/-45(非製造業)、バブル期水準
2. 高齢化: 医療・介護・物流・対人サービス需要増
3. 世帯数増: 1世帯あたり人数減(高齢者単身世帯+50万/年)、訪問・配送が1件単位化
2040年の予測(古屋試算): 不足1100万人、物流・介護・商品販売・建設で著しい不足
ホワイトカラー余剰 × エッセンシャルワーカー不足(山田):
- 生成AIは知的作業代替中心、ヒューマノイドは10年では普及難
- ホワイトカラーのAI化で仕事スピードが上がると現場にしわ寄せ
処方: エッセンシャルワーカーの時間あたり収入改善が最優先(古屋)。「普通に働けば楽になる社会」。再分配見直し。
予測2 AIと自動化: 井上智洋(駒澤大)
- 「汎用AI」実現間近 — 2027年頃に登場説(米有力説では人工超知能へ発展)
- IT業界では既に新人研修後半でAIコーディングエージェント活用を評価、中途採用減
- 熟練エンジニアよりAIを使いこなす新人が優位に
- 現場労働の汎用ロボットは2030年頃、2030年代前半に人とロボットのコストが逆転、普及まで10-20年
- 賃金低下・不安定化への対策としてユニバーサルベーシックインカム(UBI)を提言
朱喜哲の追加指摘:
- 公共の担い手が国家から企業へ移行 — プラットフォーマーがプライバシーと権利の主体に
- AIへの過度依存リスク(学生はChatGPTに親友より安心、看護介護のAI化)
- 「他人に頼る能力を奪い、複数の依存先で自律する道を奪う」
予測3 格差と分断: 矢田稚子(元首相補佐官)× 山田久
男女間・地域間賃金格差:
- 地方から都市部への女性流出加速、性別役割分業意識の残存
- 地元のロールモデル不在で女性が戻らない → 地方の未婚男性増・少子化
- 「若者や女性に選ばれる地方」プロジェクト公募に手を挙げた自治体68のみ
非正規処遇見直し:
- 同一労働同一賃金、会計年度任用職員の常勤化、短時間正社員制度
- 最賃1500円(2020年代中): 東京都1163円 vs 秋田951円(200円差)、人材獲得困難企業は淘汰
デジタルがカギ: 地方中小のDX支援で女性のフルタイム以外の正社員化
スウェーデン・モデル(山田): 合理的整理解雇+労使協調リスキリング+労働移動円滑化、「職を守るのではなくキャリアを守る」
予測4 リスキリングと労働移動: 古屋・山田・井上
古屋の賃金格差論: ホワイトカラーとエッセンシャルワーカーの賃金差は情報の非対称性の問題 — 「実際に体験すると現場の仕事は頭を使う難しい仕事」
「アドバンスト・エッセンシャルワーカー(AEW)」(山田命名):
- 海外: ホワイトカラー考える×ブルーカラー実行、日本: 現場が改善・品質管理(ブルーカラーのホワイトカラー化)を担ってきた
- 現場にAI/ロボット導入しつつ、現場力を活かすAEWを新職能化
- 介護現場でロボット・デジタル技術導入・再設計する高度人材、賃金水準も高い
- 「『意義のある仕事』『かっこいい仕事』という価値観を社会で共有する社会運動が必要」
制度的支援:
- ドイツ・マイスター制度のような資格制度整備
- 政府・使用者団体・労組連携のスキルアップ
- 賃金ファンド: エッセンシャルワークに公的ファンドから賃金上乗せ(欧州の所得補償モデル参考)、財源は税/寄付/法人税減免で大手から拠出
井上: 学びの楽しさ教育、主体的学習の重要性、近代化否定は不可
予測5 人々の働く意味・職場: 古屋・朱喜哲
古屋: 可処分時間を増やすことが幸福感・生活満足度につながる。汎用AI普及でも創造的活動への専念は現実になっていない、ブルシット・ジョブ増加
朱喜哲の哲学的考察:
- AIによる著作権無断学習=スキルの簒奪、アメリカでこの流れは加速
- AIが19世紀の絵画を学習しても印象派・キュビズムは生まれない — ゼロから新しいものの創造性は人間固有
- 必要なのは倫理(エシックス) — 「何をしないか、何をやってはならないか」を定めるもの
- 欧米では顔認証開発抑制(差別再生産のリスク)
- AIはブラックボックス化、小さな違和感に気づける直感がヒヤリハットのゲートキーパー
人間の役割=ナラティブ:
- 「これからの人間の役割とは、ナラティブ(物語)を紡ぐこと」
- 哲学の言葉がツールに。リチャード・ローティ「人類の会話を守ることが哲学の使命」
- SNSで誰とでもつながる時代に、親密な「会話(conversation)」(言葉を超えた、身体を持つ他者との場の共有)が失われた
- インターネットの強く侵略的な言葉から繊細で弱い在来種の言葉をどう守るか
- 直感を言語化することがビジネス価値の源泉
Section 2 次の10年を動かす12の提言(pp.17-39)
提言1 冨山和彦「AI時代に余る『漫然とホワイトカラー』を改革せよ」(pp.18-19)
- 日本的特徴=「漫然とホワイトカラー」を増やす構造: ジョブ型でないため役割/能力曖昧、長期雇用+年功で専門職・ブルーカラーも管理職ホワイトカラーに昇進
- AIを前提にゼロベースで組織を設計し直す: 既存組織の漸進改革ではなくトランスフォーメーション
- 真のリスキリング: 「AIを導くボスとしての判断力」
- AI時代に生き残るホワイトカラーは2-3割、セーフティネット再構築(雇用保険、バウチャー制度)
Case 日本ガイシ(野崎正人 執行役員人材統括部長)「ジョブ型で未来志向の組織へ」(pp.19-20)
- 2023年基幹職約1000人にジョブ型導入
- 課題: 「今いる社員の仕事」を基準に職務規定しがち → 将来像から各ポストに落とす評価者研修
- 一般職4000人への拡大は未定だが、一般職からの「自分たちもジョブ型に」という声を期待
提言2 冨山和彦「地方の中堅中小企業にホワイトカラーの移転を促せ」(p.20)
- 大企業の余剰ホワイトカラーを地方中堅中小に移転し、全体最適化
Case ティ・ディ・シー(TDC, 赤羽優子社長)「技術と組織改革で世界に」(pp.21-22)
- 宮城県、67人、精密研磨。JAXA・ハワイ天文台も顧客
- 祖父の鋳造業 → 父が研磨業へ転換(人を解雇したくない動機)
- 2015赤羽氏就任時の宣言「儲かる会社にする、利益は必ず社員に還元」
- 残業ゼロ目標、部署の壁撤廃(多能工化)、精密測定器導入(3カ月で一人前)
- 評価改革: 「自分だけができること」ではなく「人に教えて広げること」を高評価
- 80歳社員も在籍、採用コストゼロ、給与大企業並み
- 「はやぶさ2後継プロジェクト」で入社した社員が満面の笑み
提言3 冨山和彦「エッセンシャル領域の教育の再設計を」(p.22)
- 2種類の大学モデル: ①少数のグローバル大学 ②多数の職業教育大学
- プログラミング偏重の終焉、AIに自然言語指示でコードができる時代 → 判断力・教養教育との融合
- 高校教育: 普通科偏重、工業・商業高校を再評価
Case 熊本県立八代工業高校(池田亨教頭、山下辰徳)「地域産業界とのネットワーク」(pp.23-24)
- 文科省「マイスター・ハイスクール事業」2021~
- 産業実務家教員による授業を全5学科で300時間
- インテリア科はBIMアプリ、機械科は産業ロボットプログラミング
- 年2回企業実習、事前準備→事後成果発表を企業関係者が見学
- 県内就職率 40%→60%(2024年度)、卒業生が実務家教員として帰還
提言4 梅村将成×伊藤綾(NRHA)「医療・介護職の働き方と意識のアップデートを」(pp.24-25)
- NRHAは2024年設立、350以上の会員
- ワークシェア: 夜間オンコールを夜間対応整備事業者に委託で昼間集中
- 伊藤綾「ここいろ社員」制度(ソフィアメディ訪問看護): オンコール×土日の選択、1時間単位有休
- 課題: 医師自身が「医療者は24時間365日」という医師像から脱却できない
- 時短勤務導入で若手医師8名中6名が女性に
提言5 大湾秀雄(早稲田大)「自律的キャリア形成のために人事機能の『分権化』を」(pp.26-27)
5施策:
1. 職の標準化: 社内労働市場マッチング効率、市場価値可視化
2. タレントマネジメントシステム: 日本2-3割 vs 米8割の導入率
3. キャリアコンサルティング: 管理職がキャリアプランニングする力
4. 社内公募制度: 空きポジション補充の仕組み不可欠
5. リスキリング支援: 社外学習・自己啓発なし 日本50.6% vs 米9.5%、機会提供企業 日本18% vs 米48%
人事のプロフェッショナル化: ジェネラリスト養成から脱却、HRBP配属ルートの確立
人事部役割転換: 集権機能は残すが、事業部サポートのコーディネーター・調整役へ
経営資源配分は集権化: CXO制度で機能別・部門横断管掌
提言6 小室淑恵(ワーク・ライフバランス)「『長時間働ける』より『さまざまな人が働ける』社会へ」(pp.27-29)
- 2025年労働力人口は過去最多 — 人手不足は特定業界(教員・運送・建設・官僚)に偏在、長時間労働を前提にした職場が選ばれない
- 均衡割増賃金率: 世界的に基本給1.5倍前後、日本は1.25倍と均衡点未満
- 勤務間インターバル11時間: 欧州義務化、日本は罰則なし努力義務
- 新規雇用より残業が「お得」な制度が日本経済を衰退させる
- 「残業せずに出した成果で評価する」人事評価改革、属人化解消
- 業務を10に分解→5ずつモジュール化、ワークシェア
- 高知県庁2026年4月から時間外割増1.5倍引き上げ決定、WLBが支援予定
Case 沼田土建(青柳剛社長、吉田美由紀、林直子)「女性DX推進で現場を変える」(pp.28-29)
- 2018「キックオフ宣言」で女性中心にDX推進、吉田氏が企画室長
- 経験ゼロの林氏(元結婚退職者)を復職させ建設ディレクターに
- ICT土工導入: 3D測量・設計データで自動制御建設機械
- 「全社員ICT未経験で同じレベルから始められた」が成功要因
- ウェアラブルカメラ遠隔立ち会いで「現場張り付き」慣習変革
- 「全国建設業協同組合連合会」として勤務間インターバルと女性再就職支援を発表
- 2024年建設業長時間労働上限規制適用の危機感
提言7 高橋氏「増える共働きと単身者、『仕事以外』も尊重される職場を」(pp.30-31)
- JPSED(リクルートワークス研)の20類型分析(30-59歳)
- 正社員同士共働き増、専業主婦+正社員片働き急速低下
- 片働き家庭で子どものいる割合顕著に低下(経済理由)
- 単身正社員(一人暮らし)8.3%→11.6%に増加
提言8 橋本氏「『壁』を撤廃し、すべての働き手に社会保険の適用を」(pp.32-33)
提言9 宮野氏「包括的な移民政策で外国人と真の共生を」(p.34)
提言10 「大学は『問い合う』場であれ」(pp.35-36)
提言11 「日本を停滞させてきた課題を克服し、競争力を取り戻せ」(pp.36-37)
提言12 「常時接続時代にこそ必要な『不確実性に耐える力』を」(pp.37-38)
Column 曹氏「『中産階級』として生きられない韓国の若者が感じる絶望の本質」(p.39)
まとめ 浜田敬子編集長「これからの10年を乗り切っていくために — 『企業が変われば、社会が変わる』を信じて」(p.40)
- 浜田編集長期の総括的メッセージ(この号以降の号で編集長交代と推察)
- 企業が変化の起点になることへの信念
連載(ダイジェスト)
- ローカルから始まる。 舞台ファーム代表 針生信夫氏(農業)
- 人事のアカデミア: ケインズ
- Global View: From USA(ゴースト求人 / 人を減らすAI公言経営者), Nordic(人海戦術の限界), Policy World(高齢化と豊かさ), Work Tech World(AIエージェントと日本の「すり合わせ」強み再評価)
- 人事は映画が教えてくれる: 『フリーダム・ライターズ』— 書くことによる自己変革
- 著者と読み直す: 『ケアと編集』
読解メモ
- 創刊30周年特集2部構成(w_191過去回顧 / w_192未来予測)
- アドバンスト・エッセンシャルワーカー(山田久)は、この号でのみ提示される造語。他号で使われるかチェック候補
- ナラティブ/エシックス/会話(ローティ)(朱喜哲)は哲学的深度で、AI時代の人間性論として他号にも展開可能
- 大湾の人事分権化5施策は w_194佐々木編集長まとめの「経営人事」「分権化」論の具体的源流
- 小室の「勤務間インターバル+割増1.5倍」セットは政策提言として記憶に残る、他号で再登場するか
- 冨山の「漫然とホワイトカラー」はインパクトある造語で、w_193黒田「一強多弱」と連動
- 編集長交代のサイン: 本号が浜田(Business Insider出身)の総仕上げ、w_193-195が佐々木貴子体制
- 浜田は連載「ローカルから始まる。」の聞き手として後も継続参加
- 提言者リスト: 冨山・小室・大湾は複数回出そうな"常連候補"