• データ主導の人材開発・組織開発

【第1回】データで人材開発・組織開発は変わる

『企業と人材』誌(産労総合研究所発行)に、2019年7月号から2020年6月号までの予定で『人材開発部門のデータ活用』を連載しています。誌面だと小さくなる図表を改めて掲載する他、誌面には掲載しきれない参考文献や参考情報を当ウェブサイトにて紹介します(毎月5日の発行日に合わせて公開)。連載本文PDF

 

【図1】 本連載の全体像

 

【図2】 データで人材開発・組織開発はどのように変わるか


【統計手法の啓蒙書について】

統計手法活用の啓蒙書として私がお勧めするのは、まず何といっても、ベストセラーにもなった、西内啓氏の『統計学が最強の学問である』シリーズです。統計手法の本質の噛み砕いた説明に加え、ビジネスにおける統計手法活用のイメージも豊富である他、一般的な統計の教科書では触れられていないような実践にあたっての有益なヒントも提供されています(特に[実践編]において)。
西内啓 『統計学が最強の学問である』
西内啓 『統計学が最強の学問である[実践編]―データ分析のための思想と方法』
西内啓 『統計学が最強の学問である[ビジネス編]―データを利益に変える知恵とデザイン』
西内啓 『統計学が最強の学問である[数学編]―データ分析と機械学習のための新しい教科書』


【統計ソフトについて】

本連載では、EXCELの標準機能だけで、できるだけのことを行うことを前提とします。しかし、(本連載では8回以降に登場する予定の)「重回帰分析」や「因子分析」といった「多変量解析」を行う場合には、統計ソフトが必要になります。統計ソフトの選び方としては、EXCELの延長として使えるEXCELのアドイン統計ソフトを活用することがスムーズであり現実的です。株式会社社会情報サービスの『エクセル統計』は定評があり、使いやすいものです。(ただし有料のソフトとなります。)
株式会社社会情報サービス 『エクセル統計』

 

その他、EXCELベースの無料の統計ソフトとして、関西学院大学の清水裕士教授による『HAD』というソフトウェアは近年定評があり、それを通じて統計手法を学ぶ教科書も出始めています。高度な統計手法を含め、一般的に用いられるほとんどの統計手法を網羅しています。有料のソフトである『エクセル統計』と比べると、データをいったんツール上のワークシートに貼り付ける必要があることがやや煩雑に感じられますが、まず様々な手法を試し、習得するためには、HADで十分かもしれません。
清水裕士 『統計分析ソフト HAD』

 

自由記述回答のテキスト分析(本連載では第10回で登場する予定)も、本連載では、EXCELの標準機能だけでできるだけのことを行うことを前提としますが、テキストマイニングの専門ソフトとしては、樋口耕一氏が開発した『KH Coder』が定番のフリーソフトウェアとなっています。
樋口耕一『KH Coder』


【データに基づく経営学の研究】

経済・社会の動向を背景に提案される様々なマネジメントのセオリーは、最近では、データに基づく経営学研究に裏づけられている場合が多くなっています。
そのようなセオリーの発信源として大きな存在感を放っているのが、ハーバード大学の出版社が主催する『ハーバード・ビジネス・レビュー』です。雑誌やウェブメディアを通じて、コンスタントに様々なセオリーを発信していますが、近年はデータの裏づけを伴ったものがますます多くなっているように思います。英語になりますが、ツイッターやPodcastを通じて発信を受信するのもお勧めです。
『Harvard Business Review』

一例として、比較的最近の記事に、『リーダーがメンバーの信頼を得るための3つの要素は何か』という記事があります。その記事は、次のように、多面評価のデータ分析結果から、私達一人一人がすぐに採り入れることができる教訓を引き出す形となっています。多面評価データの活用方法に対しても示唆を与えるものです。
『The 3 Elements of Trust』 Jack Zenger, Joseph Folkman

37,000人のリーダーの360度評価結果から、「リーダーへの信頼」と相関関係がある項目を選んだ上で、さらにそれを因子分析によって3つの要素に集約すると、「ポジティブな関係構築」「優れた判断・専門性」「言行一致」の3つ。この3つとも上位4割に入れば、「メンバーからの信頼スコア」は上位2割に入る。なお、この3つの要素の中では、「ポジティブな関係構築」が最も決定的な要素であり、それが失われると他の2つの要素にもダメージが及ぶ。以上から、自分自身が、3つの要素とも平均点以上と言えるかどうかチェックして、もしどれか一つでも弱みがあれば、その向上に集中することが得策である。

 

データに基づく経営学の啓蒙と言えば、早稲田大学大学院(ビジネススクール)の入山章栄教授が、経営学の本流は本来ドラッカーやコンサルタントの「ご託宣」的なものではなく、データに基づく実証的なものである、ということを啓蒙しています。その著『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』では、例えば、下記の経営のアジェンダに関して、どのような条件下で何を行った場合に成功する確率が高いのかということについて、実証分析にて見出された有益な知見を紹介しています。トレンドに流されるのではなく、一歩突っ込んで考察する思考方法を学ぶことができます。

入山章栄 『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

【経営のアジェンダ】 ⇒ 【データから見出された成功の条件(ネタバレ防止のため一部を伏字)】
組織内の情報共有化 ⇒ ◯◯◯◯◯◯◯◯メモリー
グローバル化 ⇒ ◯◯◯キーなグローバル化
ダイバーシティ ⇒ ◯◯◯型の人材多様性/◯◯次元でのダイバーシティ
リーダーシップ開発 ⇒ ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯型リーダーシップスタイル/◯◯◯◯型の言葉
同族企業成功の要件 ⇒ ◯◯子
CSRのリターン ⇒ ◯2◯
起業促進 ⇒ ◯◯◯やすさ
起業家精神 ⇒ ◯◯パターン