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360度フィードバックの教科書紹介 (1/3)

ポスト・コロナの時代には人材開発イベントも分散化が進み、その中で、360度フィードバック(360度評価、多面評価)の位置づけはますます重くなると予想されます。360度フィードバックを改めて企画し直すにあたって本来必要な、360度フィードバックの詳細かつ情報が新しい教科書は、私が編集・執筆に参加したものも含めて、日本語のものとしては見られないのが現実です。英語版だと状況はかなりよくなります。そこで、英語版の教科書とそこで扱われている話題について、3回に分けて紹介します。

次の書籍は、導入にあたって検討すべきポイントを網羅的に整理した上で、Q&A形式で、コンサルタントとしての著者の見解を、ある程度文献も引用しながら述べたもので、書き方も平易であり、導入にあたって検討すべきポイントを整理する目的のために有用です。

Jo Ayoubi 『The Consultants’ Guide to Success with 360 Degree Feedback: How to design and deliver bespoke 360 Degree Feedback your clients will love』

下記のような目次=検討ポイントの構成となっており、それに対して著者が示す解が最善とは限りませんが(目的や状況によるので)、これらの検討ポイントに従って情報を収集し、議論と判断を重ねながら、企画を進めることはよい方法でしょう。


パート1-360度フィードバックで実現したい価値の明確化

  1. 360度フィードバックを用いて、教育研修、人材開発やコーチングプログラムにどのように付加価値をつけるか?
  2. 360度フィードバックは、戦略遂行の文脈で、どのように有益に使えるか?
  3. 360度フィードバックは、特にどのような状況において付加価値を生むか?
  4. 出来合いの360度フィードバックツールと、オーダーメイドのツールの違いはどこにあり、どちらが良いか?
  5. オーダーメイドの360度フィードバックを、組織変革ツールとして、いかに有効に機能させるか?
  6. 360度フィードバックを、その他の施策やプログラムを支援するものとして、いかに戦略的に用いるか?
  7. 人材開発プログラムの質を評価するために、360度フィードバックを使うことはできるか?
  8. 360度フィードバックのデータを他のデータと組み合わせて新しい洞察を生み出すために、どうすればよいか?
  9. 360度フィードバックを行うにあたり、自分たちが強化したい組織文化がはっきりしていない場合にはどうすればよいか?
  10. 360度フィードバックが特に有益にはたらく業種・業界はあるか?
  11. 360度フィードバックは、ジュニア、ミドル、シニアのどの役割レベルで最も効果的か?
  12. 360度フィードバックとうまく連携できる、他の人材開発・組織開発ツールとして何があるか?

パート2-参加者を巻き込む、プロフェッショナルな360度フィードバックプログラムの作成

  1. コンピテンシー・フレームワークを利用して360度フィードバック・ツールを構築できるか?
  2. 定量的なフィードバックと定性的なフィードバックのどちらがより効果的か?
  3. 回答者を巻き込む360度フィードバックアンケートをどのように設計するか?
  4. どのような評価尺度が最善か?
  5. 360度フィードバックに自由記述設問をどのように組み込むのがよいか?
  6. 自由記述設問によって回答者の匿名性が失われかねないことには、どのように対処するか?
  7. 360度フィードバックは常に匿名であるべきか?
  8. 360度フィードバックプログラムへの参加は、自発的であるべきか、強制的であるべきか?
  9. 360度フィードバックレポートはどのように設計されるべきか?
  10. 360度フィードバックレポートには何を含めるべきか?
  11. 360度フィードバックレポートは、どのような重要な問いに答えることができるか?
  12. 360度フィードバックの全体レポート(対象者全員に関するレポート)はどのように用いられるか?
  13. 360度フィードバックレポートには、フィードバックを解釈するための何らかのガイダンスを含むべきか?
  14. 育成・能力開発計画の立案は、360度フィードバックプロセスの一部であるべきか?

パート3-コミュニケーションと説明会: 360度フィードバックの成功の鍵

  1. 360度フィードバックが効果的に行われる環境を整えるために、組織として何をする必要があるか?
  2. 組織の中に良いフィードバック文化があるかどうか、どのようにして知ることができるか?
  3. 360度フィードバックを導入することは、組織にとって有害でもありえるか?
  4. 360度フィードバックのスポンサー、および最初の対象者は、誰であるべきか?
  5. 主だったスポンサーから、どのようなメッセージが発せられるべきか?
  6. コミュニケーションと説明会がなぜ重要なのか?
  7. 360度フィードバック・コミュニケーション計画の対象となるのは誰であるべきか?
  8. 360度フィードバック・コミュニケーション計画には何を盛り込むべきか?
  9. 360度フィードバック・コミュニケーション計画はいつ始動すべきか?
  10. 文書によるコミュニケーションに加えて、トレーニングを行う必要があるか?
  11. 360度フィードバック・コミュニケーションにはどのようなチャネルを使うべきか?
  12. トレーニングや説明会の機会を設ける方が効果的か?

パート4-円滑な導入: 360度フィードバックプロセスの管理

  1. 360度フィードバックを開始する準備が、対象者と回答者の両方にできているか、どうすればわかるか?
  2. 対象者ごとに、何人の回答者を割り当てる必要があるか?
  3. 回答者を、対象者が自分で選ぶか、それとも事務局が選ぶか?
  4. 対象者に回答者を選択させるにあたり、どのようなアドバイスが必要か?
  5. 顧客からも、フィードバックを求めるべきか?
  6. 顧客からのフィードバックには、まったく異なる360度フィードバックアンケートが必要か? 2つのグループのデータをどう統合するか?
  7. どのようにすれば、対象者と回答者の談合を防ぐことができるか? 回答者を対象者が選ぶと回答者は対象者について良く回答しないか?
  8. 360度フィードバックの回答に要する時間はどれくらいとするか?
  9. 360度フィードバックプロセスをオンラインで実施するためには、どのような選択肢があるか?
  10. オンラインの360度フィードバックシステムを選ぶにあたっては、システムに何を求めるか?
  11. 360度フィードバックシステムの導入にあたって、IT部門はいつの時点から関与すべきか?
  12. 対象者が、必要最小限のフィードバック回答数を得ることが難しい場合にはどうすべきか?

パート5-フォローアップ: 360度フィードバックを真に効果的なものにする

  1. 360度フィードバックのフォローは、常に一対一での報告とディスカッションを通じて行うべきか?
  2. 360度フィードバックの報告セッションにおける、報告者の役割は何か?
  3. 360度フィードバックの報告を、社内の者が行うのと社外の者が行うのとでは、どちらが効果的か?
  4. フィードバックを受け入れてもらえるようにするための、何らかのフォローアップ策はあるか?
  5. 対象者には、自身の360度フィードバックレポートを、上司のラインマネージャーと共有させるべきか?
  6. 360度フィードバックプロセスを通じて、パフォーマンス低下の原因を特定することはできるか?
  7. 報告の場で、批判的・否定的な回答内容には触れない方がよいか、逆にオープンに話し合うべきか?
  8. 360度フィードバックの結果は、同僚、チームメンバーや直属の部下とも共有されるべきか?
  9. 360度フィードバックは一回限りの活動か、それとも定期的な活動にすべきか?
  10. 360度フィードバックは、他の人事プロセスと、どのように連携させることができるか?
  11. 360度フィードバックを、業績評価システムの一部としてそのまま用いることはできるか?

パート6-360度フィードバックの落とし穴とその回避方法

  1. 十分な準備をせずに急いで始める。
  2. 用語をめぐって混乱が生じる。
  3. 期待された変化が起こらない。
  4. フィードバックの回答依頼に対して、回答率が低い。
  5. 自己の振り返り、他者からのフィードバックとも、質が低い。
  6. フィードバックやその後の変革や育成といったアクティビティへの、ラインマネージャーの関与が不足する。
  7. 対象者が、批判的なフィードバックをした者に対して敵対的な姿勢をとる。