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360度評価の点数の甘辛調整はできるか

結論から言うとできる。するだけである。

たとえば、1人の評価者が10人の被評価者を評価するとして、設問が30問あり、評価段階は5段階で1点から5点(強くそう思う:5点~全くそう思わない:1点)を配点するとする。(300個の回答値が得られる。)

そこで、「私の周りの人達はみんな素晴らしい!基本的に5点!」とつける人もいれば、「みんなダメダメだ、基本的に1点!」とつける人もいるかもしれない。

また、はっきりした人で1点から5点まで評価をばらけさせる評価者もいれば、はっきりしない人で3点と4点のどちらかしかつけない評価者もいるかもしれない。

その辺の、「評価点の水準」「評価点のバラツキ」について、評価者間で「共通のセンス」がある、という前提を置けない場合には、次のようにするしかない。

  1. 300個の回答値の平均点を出す
  2. 300個の回答値のバラツキ(標準偏差)を出す
  3. 300個の回答値を「Z値」に変換する
  4. 3点+Z値を「甘辛調整済点」とする(その上限・下限を5点・1点としてもよいだろう)

この操作は「評価者による甘辛の調整」の定義そのものである。よって、甘辛調整はできた。主観相対値法と名付けよう。

しかし、この「甘辛調整済点」を用いる方がよいと説明することは難しく(先ほどの「共通のセンスの有無」に遡る必要があるため)、よってシステムに実装する価値/コストを説明し難く、また、Excel上でこの操作を行うのも相当な手間がかかる。

しかし昨今、AIのおかげでプログラミングのハードルが下がり、回答データに対して、必要な操作を必要な時に必要なだけ行うハードルも下がった。

これからは、甘辛調整の議論が再び盛んになるかもしれない。(他にも例えば、集団Aと集団Bがあったとして、AもBも甘辛にクセがある、という場合に、AとBそれぞれの回答分布を標準的な集団のそれに合わせることで補正する、といった方法が考えられるが、補正の基本ロジックは同じである。)