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目標達成度の評価ができない – ではどうするか

【ノーレイティングという動き】

人事評価の分野において、「ノーレイティング」という動きがあります。「人事評価をやめてしまおう」ということです。この背景には、「年初に立てた目標に基づいて評価をして社員をランキングすることには意味がない」という認識が広まっていることがあります。

次の論点が含まれますが、いずれにしても、問われているのは目標管理制度の見直しです。

  1. 一年に一度の評価には意味がない (→ サイクルを短くすべき)
  2. 評価だけ切り離して行うことには意味がない (→ 報酬決定/配置検討/育成等の目的に応じて必要な情報を収集すべき)
  3. 全社員一律のランキングには意味がない (→ 人材プールに応じた多元的なランキングにすべき)
  4. 目標達成度の評価には意味がない

このうち、「4.目標達成度の評価には意味がない」ということについて、以下述べたいと思います。意外と認識されていないことと思われるからです。

 

【目標達成度の評価は本来できない】

目標達成度の評価、すなわち、ある目標を立てたとして、120%達成(だからS評価)、100%達成(だからA評価)、80%達成(だからB評価)・・・という評価は本来できません。できるのは「達成したか/しないか」の評価だけである、ということを踏まえる必要があります。

例えば、次のケースを考えてみましょう。目標達成度を何%と評価するのが妥当でしょうか?

  • 売上目標100億円のところ、実績は99億円にとどまった。(昨年度の売上は95億円だった。)

→ 「100億円の目標のところ99億円達成したので99%達成」ということには普通なりません。100億円は1億円を100回積み上げたものと考えると、それぞれの1億円の価値が異なるからです。現実には、「昨年の売上より5億円アップを目指したところ、4億円まで達成したので、80%達成」という考え方がとられる場合が多いでしょう。ただそれも状況次第であり、「取引は原則として継続するもの」なのか、「取引は原則として一回きりなので新規開拓の積み重ねが必要」なのか、によって変わってくるでしょう。仮に、新規開拓の積み重ねビジネスなのであれば、99%という評価もありえるでしょう。

  • 自働化設備導入による工数削減目標が2000時間減のところ、実績は1500時間減にとどまった。(昨年度までの工数削減実績は、平均的に1000時間減/年程度だった。)

→ 「2000時間減の目標のところ、1500時間減にとどまったので、達成度としては75%」、あるいは「工数削減の増分を1000時間とする目標のところ、増分は500時間にとどまったので、達成度としては50%」等考えられますが、これも状況次第であり、「2000時間減が設備投資回収の損益分岐点」ということであったらどうでしょう? 2000時間減を達成できなければ、「投資効果なし」すなわち「目標達成度は0%」ということにもなるでしょう。

つまり、目標達成状況の評価をSABCD評価に結びつけるのであれば、何が達成できたらS、何が達成できたらA・・・と最初から決めておくしかない、ということです。そして、S、A、B、Cそれぞれの基準に照らして「達成したか/しないか」を評価することになる、ということです。

 

【細目にブレークダウンして星取り評価する】

あるいは、目標を100個の項目に落とし込んで、その一つ一つについて、できたか/できなかったか星取表をつけて、何勝何敗か、と評価するのです。例えば、10顧客×10商品で100個の管理対象に落とし込みます。あるいは、100個の活動/ステップに落とし込みます。それによって初めて、目標達成状況を「120%達成」「100%達成」「80%達成」・・・等、実感との乖離はそれほどなく、達成度として評価することもできるでしょう。

要は、それくらい細かく目標内容および達成計画をブレークダウンし、達成すべきこととその難易度について関係者と意思疎通を図るべき、ということです。

なお、評価のサイクルとしては、月次または週次の短いサイクルで達成状況を評価しつつ、目標そのものもアップデートしていくことが理想でしょう。

そして、目標達成状況の評価結果は、人事評価の参考にはしても、人事評価そのものとは切り離すことが妥当でしょう。人事評価そのものは、「業績目標の達成状況」「360度評価結果」等、複数の情報を参照しながら、報酬決定/配置検討/育成等の目的に応じて、また、人材プールに応じて多元的に、行うべきでしょう。

 

南雲 道朋