2019-10-16
  • データ主導の人材開発・組織開発

概念の品質向上 ー 奇数のすすめ

経営が従業員を動かす道具には、お金の他に概念があります。概念というのは、「経営理念」「価値(バリュー)体系」「製品体系」「技術体系」「戦略課題」といったものです。「組織図」というのも一種の概念です。

それら概念に従って従業員が動くことで、組織もビジネスも強くなります。よって、それら概念の品質は大変に重要です。

しかし、概念の品質の良し悪しをどう判断したらよいか、ということについて、世の中で十分に考え方が確立しているとは言えません。

概念の品質基準として最も知られており、そして有用なのは、MECE(ミーシー)かどうか、ということです。つまり「モレ・ダブリがないか」ということです。モレ・ダブリのある概念に従って人々が動く時には、組織も人も強くならず、それどころか徐々に弱くなってしまうと考えられるのです。

  • モレがあっては、目的を達成できません。
  • ダブリがあっては、ある課題の担当が誰なのかあいまいになり、無責任体制になってしまいます。

例えば、ある会社で次の3つを戦略課題として設定し、3つの委員会を立ち上げたとしたら、うまくいかないことは明白ではないでしょうか。(考えてみましょう。)

  • 「新サービスの創出」
  • 「生産性の向上」
  • 「人材力の強化」

MECEな概念を作るためにはコツがあります。それは何事も2分岐で考える、ということです。例えば、「前か後か」「右か左か」、そしてそれを組み合わせて「右前/右後/左前/左後」と分ければ、MECEな空間の概念が出来上がります。同様に、例えば、先ほどの3つの戦略課題であれば、「人の問題かプロセスの問題か」「攻めか守りか」と考えて、

  • 「人の創意の発揮」
  • 「人の生産性向上」
  • 「新サービスの創出」
  • 「業務基盤の強化」

と4つの課題として設定すれば、それぞれの課題の位置づけが明確になり、委員会もよりうまくいくことでしょう。

・・・というわけで、 概念や体系を作る時には、まずはスパッと割り切られた、2つや4つや8つの項目から成る体系を作ることが、品質の高い概念を作る上でのガイドラインとなります。(その前提として、こちらのコラム『HRテック時代の360度評価データの活かし方』の『2-1. 組織運営のツボを言語化する』で紹介しているようなデータ分析を踏まえることができればいうことはありません。)

ところがどっこい、難しいもので、人や組織というのは、スパッっと割り切られていればうまく動くというものではありません。

  • 「2つの戦略課題」「4つの戦略課題」

と経営者から言われるよりも、

  • 「3つの戦略課題」「5つの戦略課題」

と言われる方が、迫力が増すように思いませんか?

どうやら、人や組織はスパッと割り切られるとそこで分断してしまい、ダイナミックな一体感や相乗効果が出てこなくなるのです。

例えば、サッカーを4人(キーパーを除く)のチームで行うものとし、

  • 「右フォワード」
  • 「左フォワード」
  • 「右バック」
  • 「左バック」

の体制で試合に臨むとすると、役割分担は明確ですが、あまり強そうな感じはしません。そこに一人、

  • 「センター」

を加えることで、攻撃や守備に厚みを加えたり、センターが縦横無尽に動き回ってポジションチェンジを促したりと、俄然、チームにダイナミックさと強さが出てきそうです。

概念にも同じことが言えるのです。真に拘って作られた経営理念を振り返ってみると、例えば、トヨタ・ウェイにしても、日産ウェイにしても、5項目にまとめられています。(見てみてください。)そこには、人と組織を動かす知恵があると思われます。

 

南雲 道朋