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AIでフィードバックからフィードフォワードへ

ChatGPTに代表される文章生成系のAIを活用することによって、360度フィードバックはどのように変わるだろうか?

フィードバックからフィードフォワードに変わると考えるのがよい。というのも、文章生成系のAIというのは文章の続きを書いてくれる・・・すなわち先を予想してくれるマシンだからである。これをイラストにしてみた。(これもAIに描かせている。Midjourneyを使用)

フィードバック – 現状を評価して行動を修正する – 鏡を見ながら歩く

 

フィードフォワード – 現状から先を予測して進む – 先を見通しながら歩く

 

さて、360度フィードバックでは、周囲からの評価データをレポート化してフィードバックし、その結果を受け入れてもらうことが中心的なイベントになる。これだけでも360度フィードバックには一定の効果があるわけだが、その先をフォローアップしていくことで、効果は持続し、確定的なものとなる。

AIを使うことで、そのフォローアップが行いやすくなる。AIが360度フィードバックデータを元に、今後の行動計画やキャリアアドバイスを勝手に作ってくれるので、それを参考に議論を始められる。今後のことを考えるというのは心的なエネルギーを要するものだが、そのハードルを下げられる。

たとえば、管理職Aさんについて、まず、360度フィードバックで得られた強み項目と弱み項目をインプットとして、GPT-4に与える。(余談だが、強み項目や弱み項目は、偏差値に基づいて選定するのがよい。)

その上で、「Aさんが適任の仕事を挙げ、その理由を説明してください。」と聞いてみる。その際、一つだけ挙げてもらうのではなくて、適性のある仕事を3つほど挙げてもらって、その中から最も適性ある仕事を1つ選んでもらうのがよい。そうすると、例えば、「戦略企画」「組織マネジメント」「プロジェクトマネージャー」の3つを選んだ上で、その中から「戦略企画」を選定してくれる。

さらに、チームでどう効果性を高めるか、ということを考えてもらう。すなわち、部内のもうひとりのマネージャーBさんについても、同じように行う。その上で、「AさんとBさんが協力して効果を出す上で、二人はどのように役割分担をすると効果的ですか?」と聞くと、「Aさんが組織の戦略立案や方針決定を行い、Bさんがその戦略や方針に基づいてチームを運営・管理することで、二人は互いの強みを活かしながら効果的な協力ができます。」といったことを考えてくれる。

そして、さらに、「AさんとBさんに加えて、もうひとりのマネージャーCさんにマネジメントチームに加わって欲しいと思います。Aさん、Bさん、Cさんが3人で最大の成果を出すために、Cさんはどのような人であることが望ましいでしょうか?」と聞くと、「Aさん、Bさん、Cさんが3人で最大の成果を出すためには、Cさんは以下のような人物であることが望ましいです。第一に、柔軟な思考を持ち、変化に対応できる能力や新しいアイデアを提案できる創造性があること。第二に、チームビルディングや組織の文化作りに長けており、職場環境を向上させることができる人物であること。・・・」と考えてくれる。さらに、AさんBさんCさんを歴史上の人物に例えさせたり、いろいろな議論の材料ができる。

複数の人達をチームとして機能させるためのシミュレーションは、たとえば、「執行役員チーム」を機能させる議論の材料として、非常に有効なものになる。これについては引き続き、別稿で述べたい。

最後に注意点を2つ。

  1. 結果だけ一人歩きさせてはならない。生成系AIから生み出されたものが「ご託宣」化して、受け身の姿勢を生まないような運用をしなければならない。議論のプロセスとセットにする。
  2. 情報セキュリティに気をつける。会社独自のChatGPT環境を構築していないのであれば、ChatGPTの一般のチャット画面に会社関係の情報を入れるべきではない。ではどうするか。ChatGPTの言わば業務用裏口であるAPIからアクセスする。APIからのアクセスであれば、ChatGPTに入力したデータがOpenAI社に学習用のデータとして使われることは、規約上ない。プログラムを組む人でなくても、プロ用のチャット画面であるplaygroundというところを使えば、APIからのアクセスになる。