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社員意識調査の教科書紹介

先に360度フィードバックの教科書を紹介しましたが、社員意識調査(サーベイ)についても教科書を紹介します。

 

単に出来合いの調査を導入するのではなく、自社独自の価値観や戦略に基づいた組織力向上に向けた、自社独自のサーベイを企画するためには、教科書が必要です。仮に外部のコンサルタントやアドバイサーの力を借りるとしても、客観性をもってしっかりと検討を行うためには、あるべきサーベイのコンテンツ/プロセスを自ら考えることができるための基準となる教科書を持っておくことが望ましいと言えます。しかし残念なことに、社員意識調査の教科書に関しても、日本語のものはほぼ見当たりません。しかし、英語で書かれたものは多々あるため、英語版の代表的な教科書を紹介します。

 

設問文言や回答案内文面のサンプルという見地からの参考書は、『企業と人材』誌連載『人材開発部門のデータ活用』参考資料第3回および第5回で紹介していますが、ここではより包括的な、「何の目的で何をどのように検討・実施すべきか」が体系的に述べられており企画・推進の羅針盤になるようなものを紹介します。

 

その意味で最もしっかりと書かれているものは、次のものであると言ってよいと思います。2000年刊行と約20年前のものですが、技術論よりも本質論に焦点を当てているため、旧さは感じさせません。著者らは、組織開発の大家であるワーナー・バークのチームに所属してサーベイの経験を積み、その経験を踏まえて本書籍も執筆しており、その意味でも信頼性の高いものです。その後の多くの文献でも引用されています。

 

 

各章ごとに要旨がチェックリストとしてまとめられており、使いやすくなっていますが、そのチェックリストの骨子を以下示します。単にサーベイを行って終わりとするのではなく、真にサーベイの効果を上げるためには何を検討・実施すべきか、ということを、このリストからも窺うことができます。

ステップ1.リソースを集約する
1.調査の目的と役立て方について、明確な戦略目標を設定する。
2.経営幹部と従業員から、コミットメントを得る。
3.負のエネルギーや無関心な姿勢が見受けられる場合にはそれを特定し、克服する。
4.サーベイを通じてどのような種類の情報を収集するか、決定する。

 

ステップ2.しっかりとした第一級のサーベイを開発する
1.組織の重要な課題に関して、事前情報を収集する。
2.すべての情報源を要約し統合することにより、主要な課題を特定する。
3.情報を提供してくれた人たちと、事前情報収集から見出したことについて話し合う。
4.合意が得られた鍵となる課題認識に基づいて、最初のサーベイを作成する。
5.代表グループやその他の組織メンバーと共に、サーベイを事前テストする。

 

ステップ3.サーベイの目標を伝達する
1.誰が、何を、どのように伝えるか決める。
2.サーベイが始まる前に、従業員とコミュニケーションを行う。
3.コミュニケーションのガイドラインに沿って、効果的なコミュニケーションを行う。
4.組織内の非公式な仕組みの影響力も考慮に入れる。

 

ステップ4.サーベイの運営管理
1.実施のタイミングをよく考慮する。(回答の量と質が確保できるように)
2.プロジェクト計画を決定する。
3.調査対象者を決定する。(サンプリングするか、全数調査か)
4.回答の運営管理およびデータ収集の方法を決定する。

 

ステップ5.調査結果の解釈
1.統計的な加工をどのように取り入れるか決定する。
2.分析や解釈に取り掛かるタイミングを意識する。
3.分析と解釈を、6つのステージに沿って実施する。

 

ステップ6.調査結果および見出されたことを提供する
1.組織内に展開するプロセスを決定する。
2.サーベイ報告書を作成する。
3.調査結果に対する組織メンバーの期待と実際の調査結果との間のバランスを取る。

 

ステップ7.学びから行動に落とし込む
1.調査結果の組織内へのオーナーシップ移転が、支障なく行われるようにする。(特に組織内の不安には丁寧に対応する。)
2.行動へのコミットメントを得る。
3.アクションプランの策定プロセスを開始する。
4.サーベイ結果を、他のパフォーマンス指標とリンクさせる。
5.アクションプランの進捗を測定し、成功を評価する仕組みを構築する。